Web 3.0に関するちょっとした議論

web2.0以前の世代からすると、web3.0はどうしてもお金先行の胡散臭い感じをするのは否めません。

web2.0側からweb3.0を見るとこういう風に見えていることを、いくつか記述します。

野口悠紀雄氏の指摘[i]

DeFiに対して

ビットコインによって、非中央集権的な経済的な取引が実現すると期待したが、現実的には「取引所」という中央集権的組織ができ、それが、2017年の改正資金決済法によって、登録制など規制の対象になったのは、当初の考えを破るものであった。デジタル人民元、デジタルドルもブロックチェーンをつかってはいるが、完全に中央集権的な法定通貨の世界であり、web3とは真逆の方向性を持つ。

既存の送金システムが成り立たない状況で暗号資産の送金手段を使う可能性はある。世界中から募金を集めるといった場合とか、国際的な金融制裁を受けている国が、既存の金融システムを回避するために利用するといったことである。

NFTに対して

NFTは、唯一性を保証しにくいデジタルアートに本物の存在証明という意味付けをするための有効な技術であるが、ダイヤモンドの品質官邸など、同様な行為はかなり昔から行われていたことである。

また、デジタルアーツが価値を持つといっても、NFTの保証するのはそれを作った人から政党に譲り受けたという証明であり、元のアーツはデジタルゆえにNFTがつこうがつくまいが、複製され流通してしまうものである。普通の絵画でも証明書がなければ本物かどうかを確かめるのはコレクターには困難なわけだから、所有という虚栄心に対する対価という意味では、格別web3だから、と言ってその重要性を強調するものではない。

メタバースに対して

メタバースはつながりの場所をSNSのようなところから、目に見える世界で提供することのように思える。ただ、現実の世界から離れて生きることのできない私たちが、メタバースに可処分時間を割くだけの価値があるかどうかは、真剣に議論されるようになるだろう。

また、web会議ツール、工場の遠隔設計・仮想稼働といったデジタルツイン、医療分野などの産業方面での展開がいろいろ考えられていくだろう。

DAO(分散型組織)に対して

DAOの運営にあたって、既存の中央集権組織からのデータを利用することが、考えられる、例えば、コンビニエンスストアをDAOで運営する場合、金融サービスから顧客の利用状況などの情報を使うといったことである。コンビニエンスストアの運営主体は、プログラムやスマートコントラクトの集まりであるDAOともいえる。DAC(分散自律型企業)では株式、DAOではトークンの持ち分によって意思決定の重みがかわるが、その在り方も検討しなければならない。

当blog筆者と知人との議論

株式会社メモリアが企業向けの『NFTマーケティング丸投げ支援サービス』をリリース。INFLUENCER BANKと業務提携し、共同でサービス提供を開始ということは成り立つのだろうか
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000088672.html

NFTは、所有権を保証することで、流通時の信頼性を高めるものです。

ダイヤモンドなどの宝飾品に付けられる鑑定書と同じ機能を持っているのですね。

店舗の会員証にそれが本物であるという鑑定書をつけるのは、別に構わないものだけど、もらった方が店舗と関係なしに別の人にそれを売り払う、といった仕組みがあれば、希少性は高まり価値があるのでしょうが、それでは店舗は何のことやら。

そもそも、そんなことをするためにNFTのマーケットに対していくばくかの金を渡すなどということは、全く無意味なことだと思います。

ま、なにかと話題の手法をつかって、顧客との関係性をつなぐというのは、悪くはないですが、そんなことやってるより、提供する料理の味とか、サービスの質とかを磨く方が顧客志向な商売と言えるでしょう。

web2.0の特性

情報流通を中央集権化できたのはSNSのインフラが寄与している。SNSは災害時にも紛争国家でもダウンせずにシステムが安定している。ユーザーは無料で操作して検索も収集も投稿も言論も可能になった。そこで個人情報と広告効果が密接な関係が構築して情報拡散や流通に寄与できた影響が強い。一方、web3はどうなのだろう

web2.0の代表的なサービスとしてSNSと検索サービスがあると思います。ただ、基本的にマスを前提としたサービスなので、自然と中央集権的になるのはやむを得ない。中央集権とは、国であれ、金融であれ、財(価値)を提供する組織とユーザーの間に「信頼」が存在しないと成り立ちません。GAFAが寡占的であるということは、多くの人がGAFAを信頼しているといってよいでしょう。

web3のキモとなるワードは「trustless」と「consensus」です。

信頼できない人たちとつながりを保つためには「合意」が重要、ということでしょう。

確かに、信頼できない人とも、みんなが正しいと思っている約束には「合意」することができる、と言うことなのではないかと思います。

信頼から合意へという世界観の変化が「すべての人が世の中を表現しているのがweb2.0」のような、「web3.0的なもの」を作っていくのではないかと感じています。



[i]Web3新世紀 デジタル経済圏の新たなフロンティア,馬渕 邦美(監修/著)、絢斗 優、藤本 真衣(著),日経BP,pp.190-208

PageTop