Web3.0が初期の段階でどのように説明されていたのかをその言葉の初出とされる、Gavin Woodが自身のブログ「Insights Into a Modern World」に投稿した記事「Dapps: What Web 3.0 Looks Like[i]」(2014年4月17日)をサマリーした。
また、web2.0からweb3への移行の価値を、2021年10月7日に投稿されたChris Dixon の「Why Web3 Matters」をテキストに拾った。
Gavinは「Ethereum/イーサリウム」の共同設立者の一人[ii]。Chris DixonはWeb3を牽引する「世界トップの投資家」と呼ばれている。[iii]
[i] https://note.com/bxjp/n/n20d31312dd5d
[ii] bxjp氏のnoteエントリー:https://note.com/bxjp/n/n20d31312dd5d
[iii] フォーブスジャパン, Web3を牽引する「世界トップの投資家」クリス・ディクソンの夢,2022/04/29,https://forbesjapan.com/articles/detail/47213
ĐApps: What Web3.0 Looks Like(自律分散アプリ:Web3.0ってどんなもの?)
(翻訳に当たっては、鳥越一平氏twitterポスト[i]を参照している。)
静的コンテンツの公開static content publication
分散化された暗号化された情報公開システムの多くがすでに存在する。ハッシュ値のような短い数値を先に送り、そのあとに本文を送ることで、その本文が正しいものかどうか確認できるという仕組み。Bit Torrent[ii]など多くの実装が存在する。本文の正確性は、それを受け取った人が確認するため、証明するための中央集権的構造は必要ない。
またこの情報を維持し共有するよう他者にインセンティブを与えるフレームワークがプロトコルに組み込まれている。
動的メッセージdynamic messages,
「IDベースの偽名低レベルメッセージングシステム(identity-based pseudonymous low-level messaging system)」。送信者(ID=Identity)の秘密鍵によって署名され、それが実際に送信者からのものであることを保証し、受信者に通信の安全な受信を提供する。ネットワーク上の人々の間で通信を行うために使用される。つまり、従来のIPアドレスレベルでの暗号化は不要で、秘密鍵を持っている特定の人にだけデータを届けることができる。
これによって、ピアーがコミュニケート、アップデート、自己組織化をリアルタイムで行うことができる。発信された情報が本質的に信頼されているかどうか、後で参照されるかどうかといったことを考える必要がない。この仕組みは、HTTPを経由した情報流通のAJAXシステム実装に相当する。
トラストレス・トランザクションtrustless transactions
コンセンサスエンジンのこと。従来のWebは基本的にコンセンサス(合意)に対応するものはなく、代わりにICANN、Verisign、Facebookなどの中央集権的な組織への信頼(トラスト)に頼り、組織が構築するソフトウェアとともに一般のWebサイトに還元されるという構造である。Web3.0、例えば中央集権化されていない暗号資産の世界では、コンセンサスアルゴリズムが中心にあり、信頼といった概念は存在しない。これをトラストレスと呼んでいる。1つの合意の破棄の影響が他のすべての合意に影響を与える可能性があるという事実は、強力な社会契約を成り立たせ、したがって、合意の破棄または故意の無知[iii]を減らすための鍵となる。
トラストレス・トランザクションは、将来の相互作用が、自動的、不可逆的に、指定されたとおりに実施されるという考えの下で、相互作用のルールに合意する手段である。簡単にいうと、分散コンピューティングにコンセンサスアルゴリズムを追加したものがブロックチェーンと言える。
統合化ユーザーインターフェイスintegrated user-interface.
Web3.0の4番目で最後のコンポーネントは、これらすべてを統合するテクノロジである「ブラウザ」とユーザーインターフェイスである。
Web 2.0 では、ビットコイン、Bit Torrent、Name Coin などのWeb 3.0に似たコンポーネントをバックエンドで使用するサイトが増えていく。この傾向は今後も続き、真のWeb-3.0プラットフォームであるイーサリアムは、投票サイトや取引所など、コンテンツのトランザクション・エヴィデンスを提供したいサイトで使用される可能性がある。もちろん、システムは最も弱いリンクと同程度にしか安全ではないため、最終的にそのようなサイトは、エンドツーエンドのセキュリティとトラストレスな対話を提供できるWeb3.0ブラウザに移行する。
Web 3.0はSecure Social Operating Systemなのである。
Why Web3 Matters Chris Dixon [iv]
Posted October 7, 2021 https://future.com/why-web3-matters/
Web1(およそ 1990 年から 2005 年)
分散型でコミュニティが管理するオープン プロトコルに関するものでした。価値のほとんどは、ネットワークのエッジ (ユーザーとビルダー) で発生します。
Web2 (およそ 2005 年から 2020 年)
企業が運営するサイロ化された集中型サービスに関するものでした。価値のほとんどは、Google、Apple、Amazon、Facebook などの一握りの企業にもたらされました。
Web3
ビルダーとユーザーが所有し、トークンで編成されたインターネットです。私たちは今、web1 の分散化されたコミュニティ管理の精神と、web2 の高度で最新の機能を組み合わせた web3 時代の始まりにいます。
なぜweb3が重要なのですか?
まず、集中型プラットフォームの問題点を見てみましょう。
一元化されたプラットフォームは、予測可能なライフ サイクルに従います。最初は、ユーザーやクリエーター、開発者、企業などのサードパーティを補完するためにできる限りのことを行います。
プラットフォームはネットワーク効果を強化するためにこれを行います。プラットフォームが採用の S カーブを上に移動するにつれて、ユーザーやサードパーティに対するプラットフォームの力が着実に高まります。
S カーブの頂点に達すると、ネットワーク参加者との関係がプラスサムからゼロサムに変わります。成長を続けるには、ユーザーからデータを抽出し、(以前の) パートナーと競合する必要があります。
この有名な例は、Microsoft 対 Netscape、Google 対 Yelp、Facebook 対 Zynga、Twitter 対そのサードパーティ クライアント、Epic 対 Apple です。
サードパーティにとって、協力から競争への移行は、餌とスイッチのように感じられます。時間の経過とともに、最高の起業家、開発者、および投資家は、中央集権型プラットフォームの上に構築しないことを学びました。これがイノベーションを抑圧してきました。
さて、web3について話しましょう。web3 では、所有権と管理は分散化されています。ユーザーとビルダーは、代替不可能 ( NFT ) と代替可能の両方のトークンを所有することで、インターネット サービスの一部を所有できます。
トークンはユーザーに所有権を与えます。つまり、インターネットの一部を所有する能力です。NFT により、ユーザーは、アート、写真、コード、音楽、テキスト、ゲーム オブジェクト、資格情報、ガバナンス権、アクセス パスなど、人々が次に夢見るあらゆるオブジェクトを所有することができます。
NFT は、イーサリアムのようなブロックチェーンの上に存在します。イーサリアムは、ユーザーによって所有および操作される分散型グローバル コンピューターです。ブロックチェーンは、誰でもアクセスできるが誰も所有していない特別なコンピューターです。
イーサリアムは、システムの基盤となる物理コンピューターにインセンティブを与えるために使用される、代替可能なトークンである ETH によって強化されています。ETH は、NFT 購入などの取引のためのシステムのネイティブ通貨でもあります。
ユーザーが代替可能なトークンと代替不可能なトークンを取得するには、さまざまな方法があります。購入することもできますが、獲得する方法もあります。
Uniswap[v] は、ガバナンス トークンの 15% をさかのぼってプロトコルの初期ユーザーにエアドロップしたことで有名です。このようなコミュニティ助成金は、善意を構築し、採用を奨励する方法として、web3 で一般的になっています。
また、創造的で起業家的な活動を通じてトークンを獲得することもできます。たとえば、人々は NFT を販売して 1 日あたり約 1 億ドル相当の ETH を稼いでいます。
トークンは、ネットワークの参加者を調整して、ネットワークの成長とトークンの評価という共通の目標に向かって協力します。これにより、価値が 1 つの企業によって蓄積され、その企業が自社のユーザーやパートナーと戦うことになる集中型ネットワークの核心の問題が解決されます。
web3 の前は、ユーザーとビルダーは、web1 の機能が制限されているか、web2 の企業向けの集中型モデルのどちらかを選択する必要がありました。
Web3 は、前の時代の最良の側面を組み合わせた新しい方法を提供します。この運動はまだ始まったばかりであり、参加する絶好の機会です。
[i] 鳥越一平twitter:https://twitter.com/ippei_eth/status/1532909409411944448
[ii] BitTorrent(ビットトレント):ブラム・コーエンによって開発された、Peer to Peerを用いたファイル転送用プロトコル及びその通信を行うソフトウェアである。https://www.bittorrent.com/
[iii] 故意の無知(willful ignorance):悪意に基づいて、何かについて知らされるのを避ける行為。その情報を知ってしまうことで、望ましくない決定を下さなければならないことを避けるための行為。
[iv] クリスディクソン:アメリカのインターネット起業家であり投資家。https://en.wikipedia.org/wiki/Chris_Dixon
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