PESOモデルの概要と特性

ソーシャルメディアを意識したメディア把握にはForresterモデルがある。これは、メディアをPaid、Earned、Ownedの3つに分類するもので、横山(2010)によってトリプルメディアと邦訳され日本でも普及した概念となっている。ForresterモデルでのEarned Mediaは、広告として露出するのではなく無償で自社を扱ってもらうという従来のPR用語の一つであり、ソーシャルメディアで生成されるWord-Of-Mouse(クチコミ)に進化したと説明され、二つの側面が示されている(Corcoran,2009)。

Bartholomew(2010)は、Forresterモデルを引き合いに出して、そこで定義されているEarned Media(以下Forrester-Earned Mediaと表記)をEarned MediaとShared Mediaに明示的に分けた。そして、新聞などの伝統的メディアやブロガーの積極的な取り組みで成り立つものをEarned Media、SNSのような受動的・反応的な情報からなるものをShared Mediaと分類した。下記に、PESOモデルにおける各メディアの解説を邦訳すると共に、そこから考察される情流の特性を列記する。なお、以下Earned Mediaと表記する場合PESOモデルでのそれを指す。

■Paid Media

第三者のチャネルや掲載場所にある、あらゆる形式の有料コンテンツを指す。これには、バナー広告、ディスプレイ広告、Pay Per Clickプログラム、スポンサーシップや記事体広告を含む。

[情流の特性]

企業からの情報は、広告メッセージとして、マスコミやCGM(消費者生成メディア)に掲載されオーディエンス(メディア接触者)に届く。

■Earned Media

新聞・雑誌・電波などの伝統的なメディアだけでなくブロガー達へのアウトリーチ(対話/相互理解)の確立を指す。企業・ブランドやその製品・サービスについて取り上げてもらうように、コンテンツ提供者に影響を及ぼして奨励してもらう働きかけを含む。

[情流の特性]

企業の情報は、パブリシティ先である執筆者によってコンテンツ化され、マスコミやCGMに掲載されてオーディエンスに届く。

執筆者には、メディア企業に属する記者や番組プロデューサー、掲載媒体に縛られていないライター、企業を評価する立場のアナリスト、多くの読者やファンやフォロアーを抱えるブロガーとインフルエンサ―を含む。

■Shared Media

消費者に制御されるSNSや掲示板などの技術を指す。オンラインとオフラインのクチコミを含む。

[情流の特性]

企業からの情報は直接自社のファンやフォロアーに伝えられ、二次的にそれらのファンやフォロアー(いわゆる友達)に伝わることで拡散していくが、一次情報の意味・文脈が保持される保証はない。また拡散される情報には、執筆者の解釈が加わったEarned Media由来のものもあり、企業が制御することは実質的に不可能である[i]

■Owned Media

企業やブランドの管理下にあるすべてのwebサイトやwebサービスを指す。企業や製品のwebサイト、マイクロサイト、blog、Facebookページ、Twitterなどを含む。

[情流の特性]

企業からの情報は、企業の管理下にあり、直接または他の3つのメディアを通じてオーディエンスに伝わるか、検索サービスを経由したオーディエンスからの働きかけで伝わる。

PESO情流.jpg

図1 PESO各メディアにおける企業からオーディエンスへの情流(筆者作成)


図1は各メディア毎の企業からオーディエンスに伝わる情流をまとめたものである。

Earne Mediaで企業が対峙する執筆者は、記者やライター、ブロガーなど、一定の社会的問題意識やオーディエンスに役立つ情報を収集するといった、積極的な情報収集姿勢がある。一方、Shared MediaであるSNSユーザーの情報収集意識は、情報源や仲介者となる隣接ユーザを適切に選択することで、自分が興味を持つような情報を効率的に入手するという、受動的なものである(風間、2012)。また、掲示板は一定の議題を基に書き込みが行われるが、その多くは一つ前の書き込みを受けての反応的なものである。

情報取得に対して積極的姿勢の相手と受動的な相手とは、コミュニケーションの組み立て方を同じにするわけにはいかない。積極的姿勢の相手はこちらかの働きかけに一定の反応を示すものだし、受動的な相手は反応をその場で直接表出しないものだからだ。したがって、Earned MediaとShared Mediaとの対応は、違うものとして認識しなければならないことを、PESOモデルは主張していることが理解できる。



[i] 仮に誤った情報が流れた場合、Earned Media環境では執筆者に訂正を働きかけることができるが、Shared Media環境では、誤ったまま拡散し、情報が訂正されてもそれは誤った情報と独立して流通していく。

このエントリーを含むPESOモデルに関連するページ

PESOモデルとは何か、それによりメディア戦略はどう変わるのか
PESOモデルの概要と特性
間違えないPESOモデルの理解
PESOモデルで見たCC Landscape
シェアードメディア(Shared Media) の3つの様相

論文:玉川俊哉「PESOモデルによるメディア把握の有用性に関する一考察―ネット炎上事象を題材にー」広報研究第21号,日本広報学会,2017/3。はこちら ※pdfへ直リンクです

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