プラットフォームとメディアを巡る不毛な論争

昨年11月に授業に使うためにMERYのキャプチャを撮っていました。

"MERY公式"という表記はブランドとしてそのコンテンツにコミットしているという理解で良いと判断するのですが。

だったら、MERYは立派なメディアだよなぁ。と思うのです。

ところで、ネットメディア方面では、DeNAのでたらめ記事を巡る議論界隈で「メディア」か「プラットフォーム」かという議論がなされていて、すごく違和感を感じているので、あらためて確かめておこうと思います。Mery.jpg

DeNAから公表された第三者委員会の調査報告書は、その考察や指摘もさることながら、前半8ページにわたって合計138項目の言葉の定義をしているところにネット業界にとどまらない社会的価値があると考えています。

日本は言葉の定義をしない、ないし共有化しないまま議論を始める傾向が強く、議論が拡散したり、結論が出ないままに消えていったりします。

そのなかから、表題の「メディア」「プラットフォーム」の定義[i]を確認し、考察します。

メディア

[報告書での定義]

特定のテーマや事象について、自己の判断と責任により、情報、事実、根拠等の資料を集め、その資料に基づいて作成した記事や情報を世間に発進する役割を果たすもの

[考察]

「ここでいうメディアには、新聞、雑誌、テレビ、インターネットなど様々な媒体がある」と補足されているところから、その運営者は一定の意見を表出するために行っていると理解できるので、情流環境といった広義のメディアという概念でないことは明らかです。本文では「言論メディア」という言葉を使っていきます。言論メディアは、運営によって何らかの経済的価値を得ようとする商業メディアと、そうではない非商業メディアとに分けることができます。

プラットフォーム

[報告書での定義]

インターネットにおいて、多数の事業者間ないし多数の事業者とユーザー間を仲介し、電子商取引やアプリ・コンテンツ配信そのほかの財・サービスの提供に必要となる基盤的機能

[考察]

補足として「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロ責法)により、ウェブサイト運営者がwebサイト上に掲載されている記事について免責を受け得るウェブサイトの事を、特にプラットフォームと呼ぶこととする」としています。プロ責法において、その対象は、下の2つに規定されています[ii]

特定電気通信

インターネットでのウェブページや電子掲示板などの不特定の者により受信されるもの

特定電気通信役務提供者

特定電気通信設備(特定電気通信の用に供される電気通信設備)を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者

・プロバイダ、サーバの管理・運営者等が対象

・典型的には電気通信事業者に当たるプロバイダが対象になるが、営利の者に限定していないため、電気通信事業者以外の者も対象となる

これらのことを合わせると、「プラットフォーム」とは情報が流れる文字通りの基盤であり、プラットフォーム自体に流れる情報の内容について関与することは無いことがわかります。だからこそ、トラブルがあってからコンテンツを消去するといった、事後処理で良しということになっているのですね。

報告書では、プラットフォームは「①プラットフォーム事業者②プラットフォーム上で情報や商品・サービスを提供する者③その情報や商品・サービスを利用する者(ユーザー:筆者注記)、以上の三者が存在する構造」としていますが、プラットフォームを運営するものがプラットフォーム事業者でありますから、若干入れ子になった矛盾があります。したがって、ここでは上の文章の最初に出てくるプラットフォームをネットメディアと読み替えることにいたします。

プラットフォームは、多くの新聞社がそうであるように自社の管理下に置くか、ismedia配下の各メディア(現代ビジネス、WEDGE infinity、JBpress)のように社外に置くかで、二つに分かれます。印刷新聞の場合多くはプラットフォームである印刷所と販売ルートは自社で持ちますが、聖教新聞のように印刷を外部委託するといった構造と同じです。

ユーザー

ユーザーは、文字通りメディアの情報や財・サービスを利用する人を指しますが、全くオープンに誰でも利用できるものと、有料無料を問わずなんらかの限定があるものに分かれます。

以上の考察をまとめて、ネットメディアは下図の三層構造で理解することができます。構造になっていると理解できます。

この図を見てわかるように、「プラットフォーム」と[(言論)メディア]は右か左かという2社択一的に考えるものでなく、レイヤーの違いであることが判ります。したがって、ネットメディアはこの二つの組み合わせ、すなわち[言論メディアであるかないか]×[プラットフォームであるかないか]の4つに分類することができます。

ネットメディアをこのように理解すると、(言論)メディアかプラットフォームかといった議論は不毛であることがわかるでしょう。

ネットメディアの6事象.jpg


[i]名取勝也・西川元啓・岡村久道・沖田美恵子『調査報告書(キュレーションメディアに関する件)』第三者委員会、2017/3/11、p.5

[ii] プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会「法律の趣旨・対象」『プロバイダ責任制限法関連情報Webサイト』テレコムサービス協会、http://www.isplaw.jp/isplaw_aim.pdf

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