2015年の日本の広告宣伝費で見えてきたパラダイムシフト

2016年2月23日に電通が2015年の日本の広告費を発表しましたので例年に準じてあげることにします。

日本経済の低成長が続く中、広告宣伝費も数年前の縮小期を脱して少しずつ成長を続けています。しかし、媒体毎の売り上げ規模を見ると、着実に、確実に、パラダイムシフトが起こっているのが見えてくるのです。

なお、ネット広告は「ネット媒体費」を従前からあげておりますのが、これは、ネット制作費のなかに webサイトの制作費が含まれているからで、Paid Mediaの市場とOwned Media市場が混在するという判断から、少なめに出る数値を使っているのも例年通りです。ちなみに、新聞など、他の媒体の数字の中にはそれぞれの媒体へ掲載するための広告原稿費が含まれています。

復調する広告市場

さて、昨年と今年の主なメディアごとの売り上げの比較は下図のようになります。

2015宣伝費.jpg

日本の広告宣伝費総額は、2008年からマイナスが続いていましたが、2012年のロンドンオリンピックの年に増加に転じました。その後、2015年の前年比+0.03%までの4年間前年比プラスが続いています。

広告統計を議論するにあたって、マスコミ4媒体(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)が長年使われていますが、私は、広告メディアの変遷を見るために、従来より新マスコミ4媒体として、新聞・雑誌・地上波テレビ・ネット媒体費を取り上げています。

2012年以降新マス4媒体合計の市場規模の推移は、広告市場全体と比例して伸びています。

しかし、4つの媒体を個別に見ると、新聞は、2012年前年比4.3%伸びて以降、13年:-1.2%、14年:-1.8%、15年:-6.2%とこの3年間に実に9.1%市場規模を縮小させており、雑誌のそれ(-4.2%)を越えています。また、地上波テレビもここ3年間の伸びは、1.9%(335億円)で新マス4媒体全体の伸び6.4%(2,773億円)への貢献はそれほどではありません。

この3年間の新マス4媒体の伸びを作り出しているのはネット広告であるわけなのです。

ネット媒体費は、2012年の6,629億円から2015年の9,194億円へと、38.7%(2,565億円)伸びを見せ、新聞の減566億円と雑誌の減107億円を埋め合わせて余りある伸びを示しています。

5年推移.png

広告は必要とされているのか

ここで、視点を変えて、広告市場の日本経済全体における立ち位置について確認しましょう。

電通の日本の広告宣伝費では、毎年日本のGDPと広告市場の比較表を上げています。

GDP比.png 2005年から2015年の間、日本の広告費のGDPに占めるの割合を時系列に見ると、2008年のリーマンショック以降それまで1.3%台で推移してきたものが、1.2%台に低下しました、しかし、2011年の1.21%を底に、この3年は上昇し、そのことが日本の広告費全体の伸びを支えてきたのだと推察できます。

広告は消費拡大の重要な手段ですから、GDP比率が上がってきているということは、「広告主の広告意識は高まることはあっても、下がっているとは言えない」と理解できるでしょう。

求められている広告とは

そこで、では、広告主は、どういう広告をしたいと思っているのかが、これからの広告事業を考えるうえで重要になってきます。

マス4長期.png 新マス4媒体の媒体毎のシェアをグラフにしたのが次の図です。

2008年リーマンショック以降新マス4媒体の市場も大きく落ち込んだのですが、その後の復調のなかで、一人ネット広告だけが気を吐いていることが再確認できます。

ここで、もう一歩「広告主はどういう広告をしたいのか」を明らかにするために、ネット広告媒体費のサブカテゴリに注目します。

ネット広告媒体費は、一定の場所を決めて掲載する「枠売り広告」と、DSPやリスティングといったシステムを利用した運用型広告に別けられて2007年から統計が取られています。


上記の4マス媒体市場規模推移のネット媒体の部分をこの二つに分けて表記しなおしたのが下の図です。

マス4長期短期.png

一目で、運用型の売り上げが急速に伸び、枠売りは漸減していることがわかります。

漸減というと、このグラフでもう一つ注目すべき場所があります。それは、オレンジ色の地上波テレビの部分です。

よく見ていただくと、地上波テレビの市場は2014年から2015年にかけて、1.2%低下しています。電通は、2014年発表分からテレビメディア広告費に、別扱いにしていた「衛星メディア関連」を足し合わせて、衛星メディア自体の推移を見えにくくしました。2014年と2015年のテレビメディア広告費の比較は下記のごとくです。

テレビ.png

2014年から2015年にかけて、地上波テレビは-1.4%となるものの、衛星メディア関連は1.5%の伸びを示しています。また、2014年の発表では、地上波テレビが前年比2.4%伸びに比して衛星メディア関連は、9.6%という高い伸びを示しています。

衛星メディアは、一般にターゲットメディアと言われています[i]。BS放送は、まだ相場が低いこともあって、一社提供の番組も多く、番組内容を広告主の商品/ブランドイメージに合わせることも比較的容易で、より視聴者に合わせた広告展開ができることが類推されます。また、F3M3層が衛星放送に流れている、と指摘する向きもあります[ii]

<結論>

新聞、雑誌、地上波テレビといった、広告掲出場所が決まっているいわゆる「枠売り」の広告媒体販売モデルは、読者・視聴者の質を選ぶいわゆる「オーディエンス・ターゲット売り」へとその形を変えようとしていると理解できます。これが、枠から人へのパラダイムシフトなのです。


[i]特集 ターゲットメディアCS広告、その活用事例|CAB-Jについてhttp://www.cab-j.org/about/special_01.php

[ii]テレビ東京 - 会社情報 - 定例社長会見,2009/10, http://www.tv-tokyo.co.jp/contents/ir/jpn/getsurei/200910.html

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