PESO modelによるメディアの理解
Gini Dietrichは、blogエントリー「PR Pros Must Embrace the PESO Model[1]」においてメディアを4分類し、それぞれを下記のように定義している。
Paid Media
このケースにおけるペイド・メディアは、おっきくて、すてきなコマーシャルや、ハイクリエイティブな印刷広告のことを指すのではありません。反対に、PR業務に対するペイド・メディアはソーシャルメディア広告や、スポンサードコンテンツ広告やe-mailマーケティングのことを指します。
Earned Media
アーンド・メディアは、パブリシティとかメディアリレーションとして理解されているものです。貴社名を印刷してもらうとか、新聞や専門誌に貴社について書いてもらうことです。それは、お昼のニュースであなたの製品に関しての話題となって目に触れます。これは、PR業界が一般に知ってもらえる、数少ない具体例一つです。
Shared Media
シェア―ドメディアは、ソーシャルメディアとして知られています。それは、とても進化していますが、マーケティングや顧客サービス部門の利用方面へだけ、取り組みが継続されています。まもなく、組織は対内向け・対外向けコミュニケーションの主要情報源としてそれを共有するでしょう。
Owned Media
オウンド・メディアは、またの名をコンテンツとして知られています。それは、貴方自身が所有するものであり、webサイトやブログで展開できるものです。あなたは、メッセージをコントロールするし、貴方のしたいように物語を語ります。
[1] Gini Dietrich | March 23, 2015 @ SPINSUCKS,http://spinsucks.com/communication/pr-pros-must-embrace-the-peso-model/
トリプルメディアとPESO model
PESO modelの原典は、定かではないが、検索で確認できる古い記述として、2010年5月にサイトsocial media explorerに掲載された「The Digitization of Research And Measurement In Public Relations[1]」がある。
このなかで、メディアをPaid/Earned/Ownedの3つに分類したいわゆるForrester model[2]を引き合いに出して、EarnedをEarnedとSharedに分けたことを明示し、それが重要点であるとして、『我々は、ブロガーの啓蒙普及活動や、そのほかの実務家による積極的な取り組みを"Earned"とする、このよりよい媒体把握戦略を信じている。』と主張している。
そして、PESO modelを検討するにあたっての評価マトリクスを提示している。
スティーブ・バレット「PR WEEK」編集長は、
『「PESO」の4要素を組み合わせた事例として有名なものは、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで受賞し、PR WEEKアワードでもグランプリを受けたプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のAlwaysというブランドの事例がある。<中略>非常に良いストーリーだったため、メディアに多く取り上げられ、ソーシャルメディアでシェアされ、広告によってさらに周知された。まさに「PESO」の4要素を満たしたコンテンツだ。この効果は非常に大きく、露出回数は45億回、世界人口の約半分がこのコンテンツを見たといわれている。
ソーシャルメディアは非情であり、ニュースの環境は真にグローバルになってきた。経営幹部は一貫したメッセージを発信し続けることが重要だ。[3]』とPESO modelを基にしたコミュニケーション活動の重要性を指摘している。
考察
広報活動の一つの様相に、商業メディアに対するメディアリレーションの一環として、自社ブランドや自社商品や自社業務の情報(ファクト)をメディアに掲載するといういわゆるパブリシティ、PR活動がある。その結果として、記事に掲載されたり、テレビ番組のネタになったりすることで、一般に対してのブランドイメージの向上や信頼評価の確立といった、レピュテーションといわれる評価軸で計測されるものとなる。ファクトがレピュテーションとして獲得(Earned)されるまでの情流と認識することがForrester Modelにある「Earned Media」一つの側面である。
その活動は、特定のリスト化された人を基になされるもので、旧来では新聞記者や、番組プロダクションがそこに記述されているが、ソーシャルメディア時代になって、Bloggerや多くのフォロアーを抱えるいわゆるインフルエンサ―がそのリストに加わることになる。
組織体からの情報は、インフルエンサ―をハブとしてその先にあるステークホルダーへと拡散されていく。
一方で、デジタルコミュニケーション手段の深化によって、ソーシャルネットワークを利用した情報拡散活動も広報活動の一環として位置づけられてくる。Twitterは、即時性、簡便性、拡散性ゆえに、マーケティング部署の利用だけでなく、企業活動の今をリアルタイムに発信する広報部署マターの情報発信メディアとして、利用されるようになっている。即時性が重要視される交通事業関連での利用が代表例である。同様に、Face Book Pageや、動画・画像共有サービスもマーケティング案件だけでなく、広報・ブランディング案件で活用する価値が認められてきている。それは、ソーシャルネットワークサービスの、伝搬力に視点をおいたものであり、発信する対象は一定の人数からなる「群」を対象としており、個人個人を識別してなされるものではない。「ファンになってくれている人」と「そのファンの友達」という「群」とその先に広がる「群」をイメージして情報発信がなされる。そしてその結果として得られるレピュテーションを評価軸として扱うのが「Earned Media」のもう一つの側面である。この側面をPESO modelでは「Shared media」と名付けたと理解できる。
このタイプの情流は、自治体の行政広報の領域で認められる。行政の対峙する最大のステークホルダーは住民という「群」として把握されるものである。住民とのコミュニケーションは、オンブズマン制度という限られた個人や組織を媒介とするもの(ただし機能的には広聴が主となる)があるものの、「住民説明会」「タウンミーティング」とか、町内会自治会への資料配布といった、もっぱら「群」としての公衆を直接的対象としてなされる。企業活動においては、個人投資家、立地住民、従業員などを対象とした広報活動において、まず対象者を「群」として扱うアプローチが取られる。
Earned Mediaの二つの様相をこのようにまとめると、PESOモデルで主張されるようにEarned Mediaを個々人のインフルエンサ―への働きから始まるEarned Mediaと「群」とのコミュニケーションから始まるShared Mediaの二つに分けて考えることで拡張されたさらに精緻なコミュニケーション戦略が設計・実践されていくと考えられる。
このエントリーを含むPESOモデルに関連するページ
PESOモデルとは何か、それによりメディア戦略はどう変わるのか
PESOモデルの概要と特性
間違えないPESOモデルの理解
PESOモデルで見たCC Landscape
シェアードメディア(Shared Media) の3つの様相
参照文献
[1] The Digitization of Research And Measurement In Public Relations,Don Bartholomew ,May 12, 2010,@social media explorer,https://www.socialmediaexplorer.com/online-public-relations/the-digitization-of-research-and-measurement-in-public-relations/
[2] Defining Earned, Owned And Paid Media, Sean Corcoran , December 16, 2009, http://blogs.forrester.com/interactive_marketing/2009/12/defining-earned-owned-and-paid-media.html(2017/9/20現在コンテンツは存在しない。)
ここに出てくる各メディアの分類表は横山隆治著『トリプルメディアマーケティング』の中に翻訳・加筆、紹介されている。・
[3] 「PESO」を組み合わせた戦略的広報~グローバルPR最新事情~,スティーブ・バレット,経済広報,2015年12月号, https://www.kkc.or.jp/plaza/magazine/201512_12.html
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