人口ピラミッドから見る、日本の人口問題の最重要課題。

日本の人口構成の変化(2006年から中期、長期)を見て

一般に、一国の年齢別人口構成は次のように分類されている。①ピラミッド型②つりがね型(ベル型)③つぼ型(紡錘型)④星型(都市型)⑤ひょうたん型(農村型)。

日本の人口ピラミッドは、1930年代にはピラミッド型をしていた(参考図1:国立社会保障・人口問題研究所)が、その後大きく変形し、2006年発表時点では、ひょうたん型、2010年現在は、つぼ型(紡錘型)に近いかたちになっている(参考図2:同上)。



<図1:1930年の日本の人口ピラミッド>
1930人口ピラミッド.jpg

<図2:2010年の日本の人口ピラミッド>

2010人口ピラミッド.jpg

時代の流れに沿って人口構成の推移を考察すると、まず第2次世界大戦後の占領地政策によって、国民生活のレベルが向上した結果、第1次ベビーブーマーが出 現。この層による出生により70年代の第2次ベビーブーマーが形成され、現在の人口分布に二つの大きな山が見られることになる。

第1次と2次の差は25年程度であるが、2次より40年近くたった今でも第3次ベビーブームが訪れているようには見えない。出産年齢の上昇と婚姻率の低下が主因であろうと思われるが、すでに第3次ベビーブームは到来しないように見え、少子化にむかっている。

一 方で、第1次ベビーブーマー層が2010年には、65歳を超え、その平均余命が、男性18.88年、女性23.97年となっていること(平成21年簡易生 命表)から、今後20年近くにわたって、人口構成のピークが高齢側へ向かって動いていく、ということが容易に推測される。

こういった人口 構成の変化は、日本に限ったことではなく、世界的に戦争や政治の不安定状態から、終戦や民主化といった安定期へ移行し、成長をつづけた諸国に見られる動き である。政治的な安定を迎えて、経済成長で中間層が育ち、国内消費が急拡大する、いわゆる「人口ボーナス」が期待できる東南アジアや、中近東、アフリカ諸 国で、人口の急増が予測されているのは、1945年以降の日本と同じ状況が発生するためである。

少子高齢化が、産業の衰退・社会のしくみの維持・地域格差といった諸問題を顕在化し、日本における大きな課題になっているのは他の言説を待たない。


本論の着目した人口構成の特徴


日本の人口構成比の変化には二つの視点がある。一つが人口減、今ひとつが高齢者の急速な増加である。ここでは、高齢者の急速な増加について視座を置く。

改 めて「2006年(平成18年)10月1日現在推計人口」を見ると、年少人口(0-14歳)は1,743万5千人で前年に比べ15万人の減少 (8.5%)、生産年齢人口(15-64歳)は8,373万1千人で69万1千人の減少(8.1%)となっているのに対し、老年人口(65歳以上)は 2,660万4千人で84万3千人の増加(3.2%)となった。

総人口に占める割合は、年少人口が13.6%、生産年齢人口が65.5%、老年人口が20.8%となり、前年に比べ、年少人口が0.2ポイント、生産年齢人口が0.6ポイントそれぞれ低下し、老年人口が0.6ポイント上昇している。

総 人口に占める割合の推移は、年少人口は、昭和50年(24.3%)から一貫して低下を続け、平成18年(13.6%)は過去最低となっている。生産年齢人 口は、昭和57年(67.5%)から上昇を続けていたが、平成4年(69.8%)をピークに低下している。一方、老年人口は、昭和25年(4.9%)以降 上昇が続いており,平成18年(20.8%)は過去最高となっている。

日本の急速な高齢化について、諸外国との比較において確認すると、 総人口に占める65歳以上人口の割合が7%から倍の14%に達した所要年数(倍化年数)をみると,ドイツが40年,イギリスは47年,イタリアは61年, フランスでは115年を要しているのに対し,我が国の場合,昭和45年(1970年)の7.1%から平成6年(1994年)には14.1%と,所要年数は わずか24年となっている。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると,我が国の65歳以上人口の割合は,今後も上昇を続け,国際的に見ても極めて急速に高齢化が進むと予測されている(総務省統計局:平成14年)。

少 子化による生産人口の減少への対策は、更なる機械化や生産施設の国外展開、産業構造のサービス化、労働力の輸入(移民解禁)といったさまざまな施策が考え られるが、高齢者の急速な増加については、強制力のある施策は考えにくく、自然減を待つに任せるほか根本的な対策はないという状況である。


高齢化の楽観と悲観

[高齢化社会への楽観論:国民にとっての精神的な活力となり消費市場の維持につながる]

基 本的に、長生きできてうれしくない人などいない。たとえば、江戸時代の寿命が50年位だと聞いて、今のほうが長生きできて「良い」と答える国民が大方であ ろうと思う。人生の質が大切といった議論もあろうが、長寿というものはそこに生活する国民にとっての大きなメリットなのである。

長寿な老人が健康に暮らし、政治に対しても一定の存在感を示す国が維持できるならば、若年層たちにも、「いつかあのような幸せな老人になれる」という期待感を持って、日々を過ごしていく勇気を与えることであると、考える。

また、高度な技術力を持つ日本においては、労働力不足を補うための産業ロボット、高齢者福祉を進展させるための介護ロボットの需要普及が期待でき、それらの技術を世界的に普及させることで、経済的なメリットを日本にもたらすと考えられる。

バイオ技術の展開による高度医療制度の実現により、健康な高齢者を生み出せば、現在定年等で労働意欲の有無に関係なく解雇されている有能な高熟練労働者層を生産人口に呼び戻すことができる。

ま た、消費者としての側面からも、比較的高い個人資産をもった現在の高齢者が将来にわたって、安定的に消費生活を送るということは、国の経済にとっても、メ リットになると考えられる。いうまでもなく、高齢者であっても「より豊かな人生」を過ごそうという欲求があり、そのニーズに合わせた商品・サービスの開拓 は、新たな市場をもたらし、経済に活性を与える機会として、位置づけることができる。

[高齢化社会への悲観論:国民にとって経済的な負債になる]

現 行の公的年金制度は、現役層が高齢者層を養うという賦課方式をとっているため、高齢化が伸展すると現役層の負担が大きくなり、制度の維持に支障が出てくる ことが考えられる。同時に、年金負担が増えることは、労働人口層の可処分所得が低下することであり、労働意欲そのものに対して、悪影響を及ぼし、ひいては 国力をも低下させることになる。

一方、日本の医療保険制度は、個人が保険料を負担したあと、不足する部分は税で補充するという構造となっ ている。加齢によって疾病リスクは高まり、高齢者は自ら支払う負担を上回る医療費の給付を受けることになり、生産年齢層の負担が増えるという公的年金と同 じ問題が発生する。

高齢者の人口に占める割合が高まることは、政治家が高齢者を重視した政策を打ち出さなければならない状況をもたら す。現役労働者である若年・中年層よりも、総票数が多くまた投票率も高い高齢者の投票が、選挙結果に大きな影響を与えるという、シルバー民主主義と一般に 呼ばれている現状では、「人口規模からみて中高年層の政策への影響力がますます強まっており、若者には無力感が強まっている。(日本経済研究センター小島 明:2008年)」という指摘がある。

高齢者への偏重は若年層の不満を招き、世代間の対立を招く可能性すらあり、経済問題を超えた社会不安を引き出す危険性がある。


日本の高齢化におけるコーポレートコミュニケーションあり方(ないし、高齢化のすすむ、ステークホルダーに対するCCはいかにあるべきか)

企 業活動の場は市場に求められる。また、市場にはさまざまなステークホルダーがいる。そして、それぞれのステークホルダー同士は、独立して存在するのではな く、お互いに影響をし合って存在している。多くの場合は一人の中に複数のステークホルダーの様相が同時に存在している。
一方、日本の人口構成は前述のように高齢化が進んでおり、高齢者と若年者といった対比で国民を分化して二項対立的に見る視点が強まっているように感じる。

そ ういった状況で、高齢者へのCC活動は、若年層への波及効果を意識したものになる必要があると考える。少子高齢化社会、ライフスタイルの多様化等を視野に 入れた場合、個人の活動も企業内や家庭内だけでなく、社会や地域といった開かれた関わり合いが重要となる。企業と個人との接点もさまざまな時・場所・様相 をもって遍在している。

高齢者とのコミュニケーションにあたって、高齢者同士のコミュニティへのものと同時に、高齢者を支える若年層への 心遣いを意識しなければならない。高齢者とのコミュニケーションは、同時に若年層へのメッセージになるのである。それは、すべての人々に対する、企業自ら の社会価値の宣言でもある。

高齢者とのコミュニケーション技法で注意すべき点は「保護するようなコミュニケーション」 (宇佐美 まゆみ)を取らないことである。それは、「お年寄りはコミュニケーション能力が劣り、無力で保護される対象である」という誤った先入観(同氏)を持たない ことである。ステレオタイプを持たないコミュニケーションは、高齢者に対してのものだけでなく、ダイバーシティ を意識した企業活動の実践を補強することになると考えられる。

商品開発や、サービス提供を通じて、高齢者に積極的にかかわっていくこと は、高齢者を支える多くの大衆に対して信頼を獲得する手段となる。高齢者の企業への信頼は、全世代に向けての企業活動全般にとって有利に働くものであり、 適切なC.C.活動はそれを補強するものになり得ると考える。

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