日本広報学会第55 回広報塾聴講メモ

テーマ:「震災とソーシャルメディア~明らかとなった可能性と限界~」
日場所:5 月25 日(水) 日本プレスセンター
講 師:藤代裕之(ジャーナリスト/学習院大学非常勤講師/内閣府震災ボランティア連携室)
【被災地におけるソーシャルメディアなどのインターネットの役割】
実際に、ソーシャルメディアが被災地で役に立っているのかと、たずねられると、あまり役に立っていないと答える。ブロードバンド普及率が50%を切る東北地方において、特に震災後1 週間、現地ではインターネットは活躍しなかった。
その後も、電気供給のままならない被災地ではIT機器はあまり役にはっていない、ノートPCが鍋敷として利用されているといった、笑えない事例もあるという。
東日本大震災は、「地震・津波」と「原発事故と首都停電」という二つの側面をもっており、基本的にソーシャルメディアの利用は首都圏に多いので、おのずと「首都圏でのコミュニケーションにソーシャルメディアが役に立った」と言え、そのコンテンツは「原発と停電」に関わるものが多かったと理解できると思う。

[玉川補足]
ソーシャルメディアとソーシャル機能について。
twitter、mixi、mobage、facebook といった会員間の情報交換を行うweb サービスが「ソーシャルメディア」といえる。
一方で、ニュースサイトに「いいね!」ボタンをつけたり、今回紹介されたAmazon 欲しいものリストなどは、ソーシャルメディア以外のweb サービスをソーシャルメディアに連携させる「ソーシャル機能」と呼ばれるものである。藤代氏の発表では、「首都圏などでは、ソーシャルメディア自体が役に立ったが、被災地に対しては、現地の情報をソーシャルメディアに接続する"ソーシャル機能"が有用であった」と理解することができる。

【今回の震災に関連するソーシャルメディア、ないしCGM の役割】
記録:被害状況の記録とアーカイブとしての役割は大きい(YouTubeや、いろいろ)ユーザーがメディア化したことで、多くのデジタルデータが残り、今後の震災被害研究への資料となるだろう。
発信:被災地のネットユーザ、自治体、報道機関の発信ツールとして利用拡大が進んだ。また、専門家による解説や、東京電力の記者会見のYOUTUBE での全編同報などマスメディアには出来ない情報発信がなされた。
連絡:google パーソンファインダー、mixi のメッセージやログイン記録、TwitterのDM(ダイレクトメッセージ)など存在確認や簡単な連絡に利用できた。
支援:Amazonのほしいものリストや、ソーシャルメディア上で盛り上がった自発的節電キャンペーン(ヤシマ作戦、ウエシマ作戦)。ポイント制度やオークション、クーポンなどを義援金収集制度として転用するといった、ネットメディア・
EC システムを利用した今までにない支援活動が活用された。

【ソーシャルメディアないしソーシャル機能を使った支援事例】
[ Amazon]
欲しいものリスト支援
各被災地から必要な物資の情報を直接発信することができた。しかし、現実的には、Amazon 社員が現地へ電話をして、手作業でシステムに直接入力するという[人]-[システム]-[人]という人が介在する形で実施していた。
しかし、必要なものが必要な時に届くとなると、「Amazon につながらない地域には届かない」ということで、不公平が出る可能性があるので、県レベルでは対応できなかった。
[Google]
google はさまざまなサービスを短期間で立ち上げた。
パーソンファインダー/通行実績マッピング(Honda の協力)/航空写真情報/YouTube 消息情報チャネル/東日本ビジネス支援サイト
[Yahoo!復興支援ポータル]
日本国内ポータルでは、Yahoo!が一人がんばっている。
[そのほか、ソーシャルメディアが関わる支援]
儀損金、チャリティーオークション、ボランティア情報、写真保存プロジェクト、電力アプリ、電気予報
【ソーシャルメディアを活用できるネットメディアの条件】
社内に、新しいサービスを開発できるリソースのどれほど抱えているか、そして、そのリソースをどれほど早くまわせる企業風土があるかどうかが、勝負どころではないか。(amazon、google、Yahoo!)。今回、人手をかけられなかったところは対応できなかった。たとえば、IT 業界のでも、物を出すだけ、システムを提供するだけでなく「被災地に役立つサービスを人手間で作り上げる」力が必要であった。良かれと思って物やプラットフォーム(PC 本体やクラウドシステム)を提供したところで「使えるようにしなければ」誰も使わないのである。
【ソーシャルメディアの課題】
不確実な情報の拡散に対する課題。
今回「有害物質が雨とともに一緒に降る」といわれたコスモ石油千葉製油所火災の風評が有名になったが、有名人blog やチェーンメールでの拡散が認められ、ソーシャルメディア利用者はどちらかといえば、炎上消し側に回ったように感じる。ソーシャルメディアの相互コミュニケーションの可視化による、消火作用が発揮されたのではないか。ソーシャルメディアは、情報の不確実性が可視化されるので、広報的には役立つメディアと言えないだろうか。
twitter 運営社は、不確実情報の拡散に対する対策として、ハッシュタグ紹介や公式RT 利用の呼びかけ。救助要請の拡散防止の公式ツイートという取り組みをした。チェーンメール転送防止については、mixi がメッセージの削除を実施した。このように、サービス提供者側も積極的に風評被害に対して対応をし始めたのは今回変わったところである。
また、経産省とデジタルガレージ(twiter 運営社)が共同で、アカウント認証を容易にすることで、公共機関のTwitter活用を支援するといった、官民共同の動きが出てきたのは「ネットは政府とは距離を置く」という今までの常識が変わり始めていると感じた。
【被災地支援に関するまとめ】
今回、うまく行った支援に共通することは「手を動かす支援」であり、「現地での活動」であり、「現地コミュニティへの浸透」である。また、被災地のニーズありきでの支援がやはり必要である。マーケティング的観点からみるとAmazonは支援を通じて、プロモーション(「なんでも売っているAmazon」の一般認知)としての効果が出たといえるのではないか。
また、ソーシャルメディアで積み重なった信頼・関心・安心が醸成されていると、いざ、というときの立ち上げが早く進む。ボランティアで指定の場所に集合したときにも、それまでのソーシャルメディアでの情報共有が進んでいるので、行動へのコンテキストができている。
ただ、被災地のなかの人は、外で流れている情報にアクセスできないので、情報の非対称が起こる。ソーシャルメディアでつながっているコミュニティと、コンサバメディアでつながっているコミュニティとの繋がりの難しさ、ソーシャルメディア化している人とそうでない人の距離といった課題がひきつづき、存在する。
【震災報道とメディア】
今回は連携がマスメディアとインターネットメディアの連携が進んだ。
  • NHK、フジテレビのニコ動、TBS・ラジオ福島のUST といった動画共有サイトの利用
  • NHK が自社サイトにパーソンファインダー掲載
  • 河北新報の紙面pdf配信

報道への評価として、震災直後に野村総研が調査した結果が紹介された。
http://www.nri.co.jp/news/2011/110329.html
 地震関連の情報提供で、重視する情報源としてテレビの地位は、とりわけ高い。ポータルサイトがそれに続き、ソーシャルメディアも新聞社のサイトに並ぶ
 震災発生後、NHK の情報に対する信頼度が上昇する一方で、政府・自治体への信頼度が低下。ソーシャルメディアに関しては、信頼度は上昇・低下の両方の傾向が存在。

[玉川補足]
上記の調査は、期間が2011 年3 月19 日から3 月20 日までということで、まともに報道活動(発行と配布)ができなかった新聞にとっては、不利な状況での結果だと考える。また、震災関連の情報に接して、「信頼度が低下した」という回答比率において新聞は5.9%。であるが、ポータルサイトの情報とほかのメディアを同列に扱っているのは違和感を感じる。
ポータルはディストリビューション機能が主であって、一次情報を作ることは(新聞社のようには)ないので、メディアとして同列には扱えない。ポータルから知る一次情報の多くは新聞社で記事化されたものである、という観点は大変重要である。
【おわりに】
マスメディア報道の課題として、伝える手段として、紙、web サイト、ソーシャルといった、メディアの選択が必要であるということを藤代氏は指摘した。伝え方として、「わたし」と「われわれ」という一人称の語りと客観報道のバランス。地方新聞やローカル局にとっての報道の対象は、まずは地元住民なのであるが、ネットは世界に広がっているので、購読・視聴エリアとの関係をどう考えるかという課題がある。
新聞メディアに関しては、一次情報主義・既報主義(昨日書いたことは今日書かない)・公情報依存といった従来からの課題がある。新聞人として「届かない情報は意味がない」ということを自覚して、すべての伝達手段(メディア)を駆使して情報を発信していく、という気持ちを持ち続けることがマスメディア(特に新聞社)にとって大きな課題になっている。

結局「人」である、と藤代氏は締めくくった。

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